今戸焼きと丸〆猫(まるしめのねこ) 

今戸焼と招き猫伝説を辿ろう !!

 かつて焼き物の街として栄えた今戸の場所は、山谷地域の東側にあたる橋場辺りから山谷堀周辺のことを言うそうですが、江戸時代の噂話を集めた「武江年表(ぶこう ねんぴょう)」によると、その大川(隅田川)沿いで素焼きの陶磁器を焼くたくさんの窯(かま)から立ち上る煙は浅草北部地域の名所のひとつに数えられていて「本朝陶器攷證(ほんちょう とうき こうしょう)」によると幕末の頃には、陶磁器を製造する家は50軒程もあったといいます。
 安藤広重 の「隅田川八景 今戸夕照」 や歌川広重の「名所江戸百景」でも描かれているように、この場所は江戸時代から屋根瓦や植木鉢、七輪、琺瑯(ほうろう)など等日用生活用品の土器類の地場産業地として戦前まで栄えていた。招き猫などの今戸焼は、瓦焼き職人たちの手慰みから始めたサイドビジネスの焼き物で、本業の片手間に作っていた江戸庶民のための安価な土人形(つちにんぎょう)の民芸品で、“一文人形”とも呼ばれていたそうだ。

 安藤広重 「隅田川八景 今戸夕照」 手前が台東区側で川向うが墨田区側 ↓
安藤広重 「隅田川八景 今戸夕照」

 最盛期の頃の今戸焼の窯の画像 ↓
今戸焼の窯

 明治24年発行の郷土玩具の図鑑「うなゐの友」には、全国から集められた郷土玩具439点が紹介されていて、その中には一文人形の丸〆猫(まるしめのねこ)の絵も納められているという。
 丸〆猫は招き猫の起源といわれていて、その形状は江戸時代の今戸焼製の招き猫独特の「横座り」で頭を正面向きにして招くポーズのものが基本だ。ちょうど野球で右バッターがボールを打つ時の構えに似ている。現在巷で見掛ける正面を向いた「前座り」の招き猫とは確かに違っている。

「横座り」で頭を正面に向くポーズの丸〆猫 (仲見世の助六にて) ↓
丸〆猫

猫のお尻には丸〆の印がある ↓

丸〆猫の印


【丸〆猫 の由来】
嘉永五年のことであった
浅草花川戸に住める一老婆
猫を愛でるが年老いて
貧しい余生を送らんとせる時
夢中にかの猫告げていふ
我がかたちを造らしめ祀る時は
福徳自在ならしめん
⇒ 「1852年のことであった 浅草に住む貧しい老婆の夢枕に飼い猫が現れ、自分の像を造って祀ればご利益があると告げた」
そして「その教えを守りおばあさんは幸せに暮しましたとさ どっとはれ」


他人此の噂を聞きて
今戸焼と称する
泥塑(でいそ)の猫を造らしめ
これを貸す、その店は
浅草三社権現の傍らにありて
この猫を求むるもの夥(おびただ)しい
⇒ 「その噂が広がって、今戸焼で造った猫の土人形が浅草観音脇にある浅草神社の傍らで売り出され大変な評判になったそうな」

 歌川広重 「浄るり町繁華の図」より 新吉原の花魁が丸〆猫を求めに ↓

歌川広重 「浄るり町繁華の図」

浅草観音の堂下にて
販(ひさ)ぐ招き猫
裏面、尾の所に「丸に〆」の印のあるもの
他にこの類(たぐい)なし

⇒ 「浅草観音堂の下で売られている招き猫は、裏面尾のところに『丸に〆』の印があるものは世間でここ以外に売られていない」

 この招き猫の元祖と伝えられる丸〆猫は、嘉永5年(1852年)に浅草観音の堂下で売り出され、大ブー­ムになったという。この置物のお尻に書かれた丸〆の印は、江戸時代の隠語で、「金銭を手に入れる」と言う意味で金銭や福徳を「丸く勢〆る」という縁起かつぎの意味合いを持つらしいが、関東大震災と東京大空襲で職人が今戸を離れ、激減し、現在今戸で東京の郷土玩具といえる今戸焼を制作しているのは「今戸焼 白井」という工房一軒のみだそうだ。時代の流れとともに今戸焼はいつの間にか世間から姿を消してしまっていった。

 長さは約250m、合計89店の店舗が並ぶ昔風ショッピング・モールが仲見世だが、その浅草仲見世商店街のHPによると、仲見世の始まりから現在の仲見世までの歴史をひもとくと、仲見世は日本で最古の商店街と言われているそうで、徳川家康が江戸城へ入府後、江戸の人口が増え、浅草寺の参拝客が激増したことで浅草寺境内の掃除の賦役を課せられていた周辺の町人に対し、境内や参道上に出店営業の特権が与えられたのが仲見世の始まりで、元禄から享保の時代の頃だと伝えられているそうだ。その仲見世で日本で現存する唯一の江戸趣味小玩具店専門店「助六」で丸〆猫を求めることが出来る。

 「神社で合コン」 婚活パワースポットとして売出中 今戸神社の巨大招き猫 ↓
今戸神社の招き猫

 山谷通いの粋客が山谷船(猪牙舟)で新吉原へ通った山谷堀も今は暗渠となり細長い公園となってしまったが、その周辺を歩くと新吉原遊郭の花魁にまつわるもうひとつの招き猫伝説がある西方寺(土手の道哲)跡地がある。その寺は関東大震災後に西巣鴨へ移転され今はない。さらに西方寺があったすぐ北側へ向かい今戸神社の境内へ入ると大きな招き猫が本堂でお出迎えしてくれる。

 この神社は、宮司さん夫婦を親に持つ、全国でも珍しい美人姉妹二人が巫女さんで、しかもお姉さんの方は副業にイラストレーターもやっているためか、神社内のデイスプレイ始め授与所やおみくじのデザインなどにも招き猫を使っている。そういえば、正面の鳥居の下には「招き猫発祥の地」と書かれた看板が「沖田総司終焉の地」の文字の上に書かれている。
 余談だが、今戸神社の境内にある石造狛犬(台東区有形文化財)は、江戸時代の今戸焼職人たちが奉納したもので、狛犬の銘文には白井善次郎の名がある。実は、その六代目が「今戸焼 白井」の白井裕一郎さんだそうだ。

招き猫発祥の地の看板

今戸神社は招き猫で売出中

 実は、今戸神社周辺は、風水でいう龍の通り道、龍脈上にあたり、しかも神社のある場所は龍が休む“龍穴”と呼ばれる地でもあるので、パワーの源、つまり気が噴き出る都内有数の気場としても知られているらしい。最近今戸神社では“縁結びのパワースポット”としても売出中で、「今戸神社 縁結び会」なる集団見合い、今風に簡単にいえば合コンも主催しているとのこと。

 境内に掲げられている掲示物を見ると、婚活を目指す20代後半から40代の男女約6,000名が神社に登録していて、永久就職を求める婚活女子が最後の神頼みとして訪れているかは知らないが、招き猫の縁結びのパワーから御利益を授かろうと「神社で合コン」 しているらしい !?

今戸神社は合コンで縁結び


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